●実世界にまで広がるWWWページ

by 椎尾一郎(日経パソコン1997.12.1, No. 302, p.413)

 WWWは、安価で誰でも参加できる世界規模のマルチメディア分散データベースであり、どのコンピュータでも使えるマルチメディアブラウザが用意されています。そこで、一般ユーザだけでなく、コンピュータ応用の研究者にとっても、WWWは格好の研究題材です。連載第一回目のコラムで紹介した、実世界指向インターフェースに関連した分野では、コンピュータ情報へのポインターであるURLを実世界に埋め込んで、実世界をWWWのページにしてしまおうという試みが、いくつか行なわれています。

●実寸大クリッカブルマップ

 WWWのページには、クリッカブルマップという仕組みがあります。例えば大学キャンパスの地図に描かれた建物の上をクリックすると、その説明のページを表示する機能です。そこで、本物の建物の前に、説明ページへのURLを埋め込めば、大学キャンパスそのものが実寸大のクリッカブルマップになります。たとえば、小形のコンピュータと、カーナビで使われるGPS受信機を携帯して、WWWサーバーに経度緯度の情報を送ります。WWWサーバーでは、経度緯度から説明ページのURLを検索して、その結果を小形コンピュータに返送します。これにより、場所にURLを埋め込むことができます。

●URLつき商品

 最近では、食品や雑貨など日用品のパッケージにURLが印刷されることも珍しくなくなりました。購入した商品についてさらに知りたいことがあれば、パソコンの前でURLを打ち込んで調べることも可能です。このURLが、バーコードや、スーパの万引き防止タグの仕組みを使って記載されていれば、コンピュータで自動的に読み取ることができます。すると、小形のコンピュータを商品にかざすだけで、物にURLを埋め込んであるかのように、関係する情報をWWWから引き出すことができるでしょう。


チョコレートにもURLがついている

 家電製品などの取扱説明書を、将来は、すべてWWWで読むことになるかも知れません。製品にURLが刻み込んであれば、取扱説明書を紛失する心配は無用です。流通や運輸業界では、物と情報の結びつけを、バーコードと専用ネットワークにより早くから自動化していました。安価なWWWのおかげで、物に埋め込まれた情報を個人でも利用できるようになりつつあります。

URL:実世界指向WWWの研究

http://www.cc.gatech.edu/fce/cyberguide/index.html
http://www-masuda.is.s.u-tokyo.ac.jp/~aya/works/UbiLink-j.html

記事リストへ戻る