●家族のアルバムをデジタルで

by 椎尾一郎(日経パソコン1997.11.3, No. 300, p.337)

 火事で家を失った時、一番悲しい物的損害は、家族のアルバムを無くしてしまうことだそうです。そういう災害に遭わずに、運良く長期保存できても、印画紙に焼きつけた写真はどんどん色あせていきます。そこで、思い出の写真はデジタルにして保存してはどうでしょうか。デジタルカメラやPhotoCDが普及して、デジタル画像で家族のアルバムを作る環境も整ってきました。

 デジタル記録の特長は、完ぺきなコピーがいくらでも作れることです。印画紙のアルバムは、複製を作るのが面倒ですが、デジタル写真のコピーは、コンピュータで作業すれば簡単です。大量にコピーして、各地に分散して保存すれば、事故や災害で失う確率はどんどん下がります。一方、こうして長期保存されたデジタル記録も、印画紙と同じく記録媒体が劣化していきます。ところが、読み出される信号値が変動しても、0と1の判別境界を超えない限り、デジタル記録は正しく読み出せます。そこで劣化が許容範囲のうちに、新しい媒体に定期的にコピーしなおせば、当初の画質を半永久的に維持することが可能です。自然界でも、生命の遺伝システムがこの手法で、遺伝子に記録された膨大な量のデジタルデータを、何万年にも渡って正確に保存し続けています。

 作った写真アルバムのコピーは、職場や親戚など、できるだけ離れた複数の場所で保存すると安全性が高まります。それでも心配なら、さらに専門家に預けるのも良いでしょう。インターネット経由で大量のデジタルデータを預かり、保管してくれるサービスもありますが、いまのところ業務用が主で、個人のデータを預ってもらうにはコストがかかりすぎるようです。万が一のためのバックアップなら、アクセスする必要はめったにないでしょうから、貸倉庫が適しているかもしれません。磁気テープやフロッピーディスクなどのコンピュータデータを保存するために、空調の完備した貸倉庫があります。しかし、CD-ROMやMOなどの光ディスクの保存なら、通常の書類用の倉庫で十分でしょう。書類箱の保管だったら、月々300円以下で可能のようです。

 家族のビデオも、今はサイズが大きくて簡単にはデジタル保存できません。しかし、技術の進歩により、動画のデジタル保存も一般的になるでしょう。ほんの10年ほど前は、静止画写真のデータだって巨大すぎてコンピュータで保存するのは不経済であると言われたものです。

 将来は、もしかしたら、大腸菌の遺伝子の一部に家族のアルバムを焼きつけて、池に放しておくようになるかも知れません。

デジタル写真アルバムをサポートしてくれるURL

トランクルームサービス。書類箱一箱240円/月で預ってくれる。思い切って遠隔地の業者を選ぶのが保安上得策かもしれない。
http://www.sumitomo-soko.co.jp/trunk/trunk.htm
http://www.peace1.co.jp/~f10249/

デジタル写真データから印画紙に焼きつけてくれるサービス。額に入れたり、財布に入れるために、まだまだ印画紙は必要?
http://www.ABYZ.com/
http://kodak.co.jp/
http://fijifilm.co.jp/など

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