仮想会議システム
Virtual Conference Room

1993-1997

コンピュータの中の仮想の会議室でミーティング

 

1. はじめに

仮想会議室システムは、遠隔地にいる多人数の会議参加者が、実時間で会議を行うシステムである。このシステムでは、直感的でわかりやすく、効果的な議事進行を実現する目的で、会議室メタファーによるユーザインタフェースを採用した。

2. 仮想会議室の概要

図2に、仮想会議システムが、会議参加者のワークステーションに表示する仮想会議室の様子を示す。参加者全員のワークステーションに、同じ画面を表示する。参加者は、それぞれアニメーションオブジェクト(エージェント)として表示される。

参加者は、エージェントを直接操作することで、議事進行のためのお互いの調整を行う。この様子は、全員に同時に伝達されるので、複雑な会議状況が直感的に理解できる。また、会議に途中から参加した人が会議状況をすばやく把握できる利点がある。

3. 仮想会議室の要素

仮想会議室に表示されるオブジェクトは、

●エージェント (Agent)

●会議室 (Conference Room)

●備品 (Conference Item)

の三種類の要素で構成される。

●エージェント

エージェントは、仮想会議室のウィンドウに表示されるアニメーションオブジェクトで、会議参加者の一人一人を表現している。

顔の部分は、参加者の顔をビデオカメラで撮影し、正面、口を大/小に開く、左右上下へ首を振るの合計7種類の静止画を取り込んだ。参加者の顔を用意できない場合に備えて、漫画の顔も用意した。

顔を大きく表示しても自然に見えること、手足のの動きを明瞭に表示することを理由に、エージェントの体は、コンピュータグラフィックスによる人工的なものにした。

参加者は、自身のエージェントだけを操作可能で、以下に示すような動作が可能である。

・話す

発言の音声パワーを検出して、エージェントの口を開閉するアニメーションを行う。これにより、発言者を容易に特定する事ができる。(図1)

図1. 参加者の発言の音声パワーを検出して、エージェントの口を開閉するアニメーションを行う。

 

・歩く

エージェントをドラッグすると、足が表示されて、会議室の中を歩くことができる。(図2の右端のエージェント参照)

・手を挙げる

マウスボタンを押すと、エージェントが手を挙げる。発言を求めたり、投票する動作。(図2参照)

・頭をうごかす

キーやメニューの操作で、うなずく動作をする。

・備品(例えばチョーク)を持つ

黒板などの備品をダブルクリックすることで、操作権を要求する。

●会議室

開催している会議を表す、図2に示すウィンドウである。会議メンバーのエージェントを会議室内外に移動することで、会議への出退席を表す。

●備品

会議室の中の、机、演壇、チョークなどをシミュレートするオブジェクトである。共用のアプリケーションの操作権を、視覚的に表すことに使用する。例えば、黒板は、一ユーザが操作できるグラフィックエディタである。これのチョークを獲得することが、操作権の獲得を表現する。二人以上が操作権を要求した時は、エージェントを行列させることにより待ち状態を表示する。

 

4. 音声の制御

音声は、会議内容そのものを伝えるので、実時間会議システムでもっとも重要なメディアである。仮想会議システムでは、参加者別に音声の混合を行い、自然で効果的な議事進行を実現しようとしている。音声の混合には、エージェントの状態に応じて、以下に示す3つの音声伝達モードを考えている。

●通常モード (Local Talk)

エージェントが普通の状態にあるときの会話のモード。発言者との距離に応じて音量を調整することで、開放的なサブグループの会話に使用する。

●演説モード (Global Talk)

すべての人に一律に大きく聞こえるモード。挙手や、演壇に登ることで、このモードに入る。

●秘話モード (Private Talk)

エージェントを重ねると、そのエージェントの間だけに声が聞こえる。他の参加者は、秘話モードになっていることを視認でき、さらに自分を重ねることで、秘話に参加できる。閉鎖的なサブグループの会話に使用する。

 

5.おわりに

音声伝達モード以外の機能を、仮想会議システムで実現し、3ユーザにより、本システムを試用した。今後は、実際の会議で使用して、使い勝手の確認をしたいと考えている。

 

参考文献

M. Kobayashi and I. Siio. Virtual Conference Room: A Metaphor for Multi-User Real-Time Conference Systems. In Proceedings of the ROMAN '93, Nov. 1993


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