Report Vol. 6

第6回:3週間で実施したこと

このページでは、わずか3週間の滞在で何を実施したかについて列挙いたします。

新しいプロジェクトを始動した。

滞在先の教授と博士学生と3人で、3週間の間に5回ほど議論の時間(1回1時間半〜2時間)を設け、新しい研究課題に取り組み始めました。 (それとは別に、博士学生と2人ではほぼ毎日議論をしていました。)
前半2週間の3回の議論で研究課題を絞り、その間に論文をサーベイしてどの論文のどの部分を参考にするかをまとめました。 サーベイした論文のPDFファイルを次々にDropBoxに保存し、問題設定上のメモをGoogle Docに書き加える、という作業を繰り返しました。
後半2回の議論に際して博士学生と私とで簡単なソフトウェア実装をはじめ、研究課題の感覚をつかみました。 これから新しい結果を出すためには何をすればいいか考えるための実行結果を得ることができました。 なお、この研究には2014年のシドニー訪問時に開発した2つのソフトウェアの片方を利用しています(左図参照)。
議論の最終回では、これから数か月間で何を達成すべきか、何か月後にどこに論文投稿したいか、 私の帰国後も継続的に議論するために何曜日の何時に集まるか、などといった詳しい計画を立てました。
かなり発展性の高い研究課題で、このチームでおそらく論文を3,4本にわけて書けるのではないかと期待しています。

私が目指したい教授像として、研究室や学会などの組織運営に主軸を置きながら、自分でも手を動かし続ける プレイングマネージャーでありたいという願望があります。 今回の滞在はその願望を持ち続ける機会として、非常にありがたい時間となりました。

一方で滞在先研究室の指導方法は自分の目指しているものに近く、大変参考になりました。 週1回の全体ミーティングでは研究動向や出張報告の共有にとどめ、多くの議論を個人またはチーム単位で消化していました。 議論では研究分野全体を網羅する大域的な話から、実装方法やスケジュール管理、次回の議論までに手を動かす内容など、 抽象論から具体論までの広いレンジにわたる意思確認が徹底されていました。 この経験を参考にして、自分が目指す指導者像を突き進みたいと再認識しました。

講演した/会議に参加した。

滞在4日目に1時間ほどの講演をさせていただきました。講演に際して学内のメーリングリストを通して通知をしていただいたおかげで、多くの方に来ていただき、聴講者の何人かとは後述のとおり個別に議論の時間を作って頂きました。
逆に私も、3週間の滞在の中で他の方の講演をいくつか聴講することができました。

また研究室の週1回の全体ミーティングにも参加しました。 これは日本の研究室や授業科目で「ゼミ」と呼ばれているものに相当します。
今回の滞在先研究室は教授が女性ということと関係あるのか関係ないのか、 所属学生も半分以上が女性で、女子大学に勤務する自分には参考になることがある点がありそうに思いました。 いろいろな学生と研究内容を議論した限りでは、女性の多い研究室だからといって研究テーマに違いがあるようには全く感じないのですが、一方で といった点は自分がいままでに訪問したどの海外の研究室よりも顕著で、ひょっとしたらそのあたりを自分が参考にすべきではいう気がしました。
全体ミーティングでは、事前に論文を配って読んでもらい、その感想や改善点を90分かけて議論して洗い出すという、 一種の反転授業のような形式が採られていました。面白いのでぜひ私も採用してみたいです。

多数の研究者・学生と個別議論の時間を設けた。

滞在中に5組ほどの研究室学生と1時間ずつ議論の時間を設け、特に各学生の研究課題を聞かせていただきました。 また学内の4人の教授とも個別に時間を設け、お互いの研究課題を共有し、またお互いのライフワークについて会話しました。

私の研究室ではいくつかの研究分野に取り組んでいますが、その中には学生の短期留学先探しに苦戦している研究分野もありました。今回会談した教授の中には、その研究分野で華麗な業績を残している教授もいますが、嬉しいことに私の研究室学生の受入れを検討してくれるという返事を頂くことができました。

また、私の講演の聴講者の中には台湾から2か月間UBCを訪問している教授がいたのですが、その教授が私の講演に大変興味をもってくださり、また研究課題に関連性が高いことから、ぜひ将来的に共同研究を実施しよう、ということになりました。 私が滞在しているうちにもプログラムやデータの共有について情報交換を進めており、具体的な共同研究にもすぐ入れそうな状況です。
また、台湾では日本人研究者を招へいする研究予算もあるそうで、場合によっては私を招へいする予算申請を出したい、という話もされていました。大変ありがたい話であり、今後の共同体制を積極的に議論していきたいと思います。

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