Report Vol. 3
第3回:研究内容
私は勤務先大学にて、情報科学の中でもいくつかの研究分野に従事していますが、そのうち今回の訪問先では「情報可視化」という研究分野に絞って研究を進めています。 簡単にいえば、多種多様な情報を画面上で見て理解するための描画や操作に関する技術です。 雑な言い方をすれば、EXCELのグラフ描画機能を高性能化したもの、なんてのも情報可視化の一種と言えるかと思います。
参考までに、このような情報を可視化した例を下の図に示します。
この研究を何に使うのか、この技術で何を見るのか、という質問がよくあります。
情報可視化に限った話ではないのですが、研究には最初から明確な目的や用途がある課題もあれば、目的や用途を一つに絞らずに汎用的な理論や道具を開拓する課題もあります。
私はどちらかといえば あえて目的を一つに絞らずに、後からいろんな目的に転用できる手段(=道具)を研究する というスタンスでこの研究課題に取り組んでいます。
そのような道具が1,2年後に、明確な目的をもって研究室学生や共同研究先企業に使ってもらえればよい、自分自身の研究はそのお膳立てとなる黒子のような存在でよい、と考えています。
それに加えて私の研究に限って言えば、企業の専門業務に使ってもらう目的の研究が多く、日常生活に見かけるものではないので何に使うのか説明すると話が長くなるという面もあります。
6年前に カリフォルニア大学 を訪問先に選んだ動機は、この研究分野をリードする Kwan-Liu Ma 先生と日常的に親しくさせて頂いているから、というものでした。 今回の訪問先に シドニー大学 を選んだ理由もこれと同様で、この研究分野をリードする Peter Eades 先生と昔から親しくさせて頂いていたことから、シドニー大学とは昔から縁があった、というのが有力な理由となります。
私は若い頃はどちらかといえば歴史の浅い研究課題に取り組むのが好きで、大学に勤務する以前の企業生活でも2,3年単位でいろんな研究課題を渡り歩くような生活を送ってきました。 一方で現在の勤務先大学では、いくつかの研究課題に取り組みながらも出張先では6年前も現在も同じ「情報可視化」を研究課題に選んでおり、どちらかといえば一つの研究課題に腰を据える方向にシフトしています。 この点については簡単にいうと以下の背景があげられるかと思います。
- 国際会議の大会委員長を務めさせて頂くなど、この分野において一定の責務が生じている。
- 国際的な盛り上がりの割には日本国内で着手している人の少ない研究分野であり、私自身もどちらかといえば日本人の少ない研究分野に従事することでトクをした経験が多いと思っている。 日本人の多い研究分野だったら私ごときに大会委員長なんぞ回ってくるかどうか…。
- 企業や研究機関の日常専門業務の支援を研究課題にしたいという思いがある一方で、情報可視化に対しては企業からの問い合わせが多いので、自分の指向に合った研究をするにも有利そうである。 この問い合わせの多さも、日本人研究者が少ない分野ゆえのメリットなのかもしれません。
- 勤務先大学の学生に興味を持ってもらえる課題である。 国際会議でも情報科学のわりには女性参加者の割合が異様に高い傾向があり、ひょっとしたら女性に人気のある課題ということも言えるのかもしれませんが、確かではありません。
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